こんばんわ。ブロガーNです。
SF小説を読んでみたいけど、なかなかきっかけがつかめないと思う人は多いと思います。そこで、このブログではSFを読む事で拡がるテクノロジーの世界について解説していきます。これを読めば、きっとSF小説を読む楽しさが倍増しますよ。
今回は、アーサーCクラークの名作「地球幼年期の終わり」から、宇宙旅行の話です。
小説の中では、27才の大学生ジャン・ロドリクスが、地球に現れた異星人の宇宙船に密かに乗り込んで、地球から40光年離れたりゅうこつ座方向にある異星人の故郷の星へと向かい、2ヶ月後にたどり着きます。この異星人の宇宙船は光速の99%の速度を出せるので、その2ヶ月の間に地球では40年もの歳月が過ぎていました。
これは、SF小説にはしばしば出てくる現象であり、アインシュタインの特殊相対性理論によって裏づけられています。この有名な理論は現代の物理学の基本的な理論の一部となっていて、実際の観測や実験によって確認されています。
時間の遅れは、相対速度が速ければ速いほど大きくなります。たとえば、光の速さの90%、秒速27万kmで飛んでいるロケットの場合、時間の進みは通常の43.6%になります。
実際には、時間が変化するのではなく、高速で移動する物体の動きが遅くなるので地球上の時間との乖離が起きるのですが、この辺りの話は難しくなりますので、興味のある方は、専門書をお読みいただくのが良いと思います。
さらに、時間の進み方は重力にも影響されるそうです。
相対性理論によれば、重力が強い場所ほど時間の経過が遅くなると予測されています。これは、強い重力場における時空の歪みが時間の流れを変化させるためです。例えばブラックホールの周囲では、重力が非常に強く、そのため時間は遅く進むことになります。
なので、例えば光速に近いスピードで銀河系の中心部のブラックホール付近へ行って帰って来ると、速度と重力の両方の影響を受けるため、宇宙船の中の時間では約10万年なのに、その間に地球上では数百万年単位で時間が経過します。
今から10万年前と言えば、地球は氷河期で、我々ホモサピエンスがアフリカを出て世界に広がって行った頃です。そして今から500万年前といえば、ようやく最初の猿人(アウストラロピテクス)が生まれた頃になります。もしこれから銀河系中心部まで光速に近いスピードで行って帰って来るとすれば、500万年後の全く違うレベルに進化した人類(と、呼べるのかわかりませんが)に会う事になりそうです。
「幼年期の終わり」では、80年後にジャンが宇宙旅行から戻ると、世界中の子供達が意識共同体となって宇宙へ旅立つところでした。そしてジャンは、たった一人残った人間として、地球の最後を見届ける事になります。
現時点で高速に近い速度で移動できる宇宙船が無いので、時間経過の差を実感する事は出来ません。なので、宇宙旅行から戻るとそこは未来の地球だったと言うシーンは、今後もSFのイメージを持ち続けるでしょう。
おわりに
実際にはりゅうこつ座には太陽から約40光年の距離の恒星はないのですが、近いのは53光年の距離のHD 65907 (りゅうこつ座の三重星系)があります。
ちなみに、太陽系を離れつつあるボイジャー1号の速度は、秒速16.7kmだそうで、これは光速のたった0.006%しかありません。この速度では、りゅうこつ座HD65907まで100万年くらいかかってしまいます。
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