こんにちは。ブロガーNです。
気持ちがモヤモヤした時、短時間で気分を変えたいと思いませんか?
そんな時にこのブログを読めば、宇宙のイメージと知らなかった知識が気分転換のきっかけになります。
今回は、光瀬龍の代表作「百億の昼と千億の夜」から、ディラックの海の話です。
小説では、あしゅらおう、シッダータ、おりおえなの3人は、数千年間放置されたアスタータ50の惑星開発委員会のビルにたどり着きます。そこで、最後の巨大な敵MIROKUに遭遇します。
激しい最後の戦いの中で、世界を荒廃させ人類を滅亡に導こうとする理由を尋ねますが、逆に数千年もの間MIROKUを追い求める使命を与えた者は誰なのかを問われます。その心理攻撃から逃れるために、あしゅらおうはMIROKUの潜む空間を閉鎖し、ディラックの海に埋没させるのです。
引用が少し長くなりましたが、ディラックの海(Dirac Sea)は、物理学者ポール・ディラックによって提案された量子場の理論の概念です。ディラックの海では、物質粒子である電子が陽電子(反電子)と対となって存在すると考えます。
通常の空間では、我々が観測するのは電子だけですが、ディラックの海では空間全体が電子と陽電子のペアで満たされていると考え、物質粒子(例えば、電子)が現れるときには、この海から一つの電子が取り出されていると捉えることができます。同様に、物質粒子が消滅するときには、電子と反電子のペアが再びディラックの海に戻るということになります。
陽電子は宇宙空間に存在し、宇宙線にも含まれています。また、地球上の核反応や放射性同位元素の崩壊などでも生成されます。
さらに、医療用の陽電子放射断層撮影(PET:Positron Emission Tomography)という技術では、陽電子と電子が反応して放出されるガンマ線を用いて、体内の代謝活動や疾患の評価を行うことができます。
PETは、主にがん検診に利用されます。まず、陽電子(ポジトロン)を放出する検査薬を静脈から注射し、体内に検査薬(ブドウ糖)を多量に取り込む細胞があれば、その細胞から陽電子が多く放出されます。
陽電子が消滅する際にはガンマ線を体外に放出するので、そのガンマ線をスキャンすると、多く放出される部分が光って見えるのです。がん細胞は多くのブドウ糖を取り込む性質があるため、ガンマ線が多く体外に放出される個所を見つける事によって、がんの早期発見が可能となります。
物語では、おりおえなが作った時空移動手段のエネルギー源として、再びディラックの海が登場します。3人のサイボーグは、アンドロメダ銀河の第8象限の座標へ飛びますが、そこは閉鎖された虚数空間でした。そこから脱出するために虚数空間に接触すると、限りないマイナスエネルギー、つまりディラックの海に取り巻かれてしまうため、3人合わせて11億メガワットのエネルギー出力で0.08秒間だけそれを制御して脱出を図るのです。
おわりに
ポール・ディラックは1933年にノーベル物理学賞を受賞しています。一般人には謎の多いディラックの海ですが、できる限りイメージしやすく説明すると、以下のような概念です。
宇宙のどこかに、無限に広がる海があるとします。この海は「ディラックの海」と呼ばれ、その海には陽電子と呼ばれる粒子がたくさん泳いでいます。陽電子は、電子の反粒子であり、電子とは反対の電荷を持っています。
そして、電子もこの海に存在しています。ディラックの海の中では、電子と陽電子が相互作用しながら存在しているということです。
これは少し不思議なイメージかもしれませんが、量子力学では粒子が常に相互作用し合い、エネルギーの変換や物質の振る舞いが起こっていると考えます。量子力学は、原子や素粒子の世界を説明する理論であり、非常に小さなスケールでの物理現象を取り扱います。ディラックの海は、この量子力学における粒子の性質や振る舞いを理解するためのイメージなのです。
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