ガニメデの優しい巨人3 – 木星探査

このブログは、主に宇宙を題材にしたSF小説の中から、科学や物理に関連するトピックを選んでわかりやすく解説します。宇宙に興味のある方はもちろん、これまでSFを読んだことのない方にも、科学の扉を開くきっかけになる事を目指しています。読む時間は5分程度なので、ちょっとしたスキマ時間で気分転換になると思います。そして小説を読んだ後にもう一度この記事を読むと「なるほどー」な感覚が楽しめますよ。

今回のテーマは、SF作家ジェイムズ・P・ホーガンの小説『ガニメデの優しい巨人』から、「木星探査」の話です。

pia21770large
Since it arrived at Jupiter in 2016, NASA’s Juno spacecraft has been probing beneath the dense, forbidding clouds encircling the giant planet – the first orbiter to peer so closely. It seeks answers to questions about the origin and evolution of Jupiter, our solar system, and giant planets across the cosmos.

木星探査は昔からの夢
小説では、2020年代に第5次木星探査隊の宇宙船が月の軌道上で組み立てられています。
この小説が書かれたのは1980年ごろ。当時は、21世紀には人類が本格的に木星探査を始めている、という未来像が自然に思えたのです。
木星は、太陽系で最大の惑星です。大きさだけでなく、そのまわりにあるたくさんの衛星にも注目が集まっています。特に有名な4つの衛星 -イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストは、1610年にあのガリレオ・ガリレイが発見したものです。
これらは「ガリレオ衛星」と呼ばれ、今日でも多くの探査プロジェクトのターゲットになっています。

これまでの探査機たち
人類はすでにいくつかの探査機を木星へ送り込んでいます。
まず1973年にパイオニア10号が、初めて木星に接近しました。
続いて1974年のパイオニア11号、1979年にはボイジャー1号と2号が木星の詳細な写真を地球に送ってきました。
1996年には「ガリレオ探査機」が木星の周回軌道に入り、長期間の観測を行いました。
2011年に打ち上げられたNASAの木星探査機「ジュノー(Juno)」は、2016年に木星周回軌道に入り、木星を周回して様々な観測を行っています。現在ミッションの延長期間にあり、2025年9月まで探査を継続しています。
これらの探査機たちは、木星の巨大な嵐「大赤斑」、強力な磁場、そして数多くの衛星の特徴を明らかにしてきました。

これからの木星探査:エウロパ・クリッパーとJUICE
現在、進行中の探査プロジェクトもあります。
そのひとつが、2024年に打ち上げられた エウロパ・クリッパー です。
この探査機は2030年に木星系に到達する予定で、主に衛星エウロパを調べます。
エウロパは、地球の月と同じくらいの大きさですが、表面は分厚い氷でおおわれています。
その下には、なんと地球のすべての海よりも多い水があるかもしれないと考えられているんです!
もし本当にそうなら、そこには「生命が存在できる環境」がある可能性があるのです。

もうひとつ注目すべきプロジェクトが、ヨーロッパの宇宙機関(ESA)が進めている JUICE(ジュース) です。日本のJAXAもこのプロジェクトに参加しています。
JUICEは2023年に打ち上げられ、2031年に木星系に到着。
ガニメデ、カリスト、エウロパを詳しく調査し、最終的には 2034年にガニメデの周回軌道に入る予定 です。ガニメデは太陽系で最大の衛星で、金属の核を持ち、自前の磁場まであります。
その地殻の下にも海があると考えられており、生命の存在を探るうえで重要な手がかりになると期待されています。

PIA24681_Juno_Ganymede_Close-Up-1
This image of Ganymede was obtained by the JunoCam imager aboard NASA’s Juno spacecraft during its June 7, 2021, flyby of the icy moon. At the time of closest approach, Juno was within 645 miles (1,038 kilometers) of its surface – closer to Jupiter’s largest moon than any other spacecraft has come in more than two decades.
NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS

■ 探査からわかること
では、こうした探査によって、何がわかるのでしょうか?

生命の可能性

エウロパやガニメデに海があるなら、そこで微生物のような生命が存在しているかもしれません。生命の痕跡を見つけることは、人類にとって大きな発見です。

太陽系の歴史

木星のような巨大な惑星は、太陽系ができたばかりのころの姿をとどめている可能性があります。その構造や成分を調べることで、太陽系の「過去」を知る手がかりになります。

将来の宇宙探査の足がかり

木星の衛星には、水やエネルギー資源があるかもしれません。それらを活用すれば、火星より遠い宇宙を目指す人類の「中継地点」として使えるかもしれません。

まとめ:私たちの未来と宇宙
今、人類は遠く離れた木星に向けて、着実に探査を進めています。昔のSF小説の中だけの夢だったことが、少しずつ現実になっているのです。
木星探査は、単なる「科学の実験」ではありません。そこには、「私たちはどこから来たのか?」「宇宙には他に生命がいるのか?」という、誰もが抱く根本的な問いへのヒントがつまっています。
きっと、これから10年、20年の間に、私たちは木星やその衛星から驚くようなニュースを聞くことになるでしょう。それが、宇宙への旅の次の一歩になるかもしれません。

それではまた、次回の宇宙トークでお会いしましょう!
ブロガーNでした。

参考リンク

木星探査機「ジュノー」が観測、巨大な惑星の知られざる嵐と“環”の美しい姿(リンク)

JUICE-JAPAN – 木星氷衛星探査計画 ガニメデ周回衛星(リンク)

購入リンク


コメント

タイトルとURLをコピーしました