時間は存在しない -プランク時間

“時間は存在しない”世界で、私たちは時を創れるのか？　

こんにちは、ブロガーNです。
今日は少しだけ、SFから離れて時間の話をしてみたいと思います。
それも「時間が始まる前」について。

そんなこと考えても意味がない？
実は、物理学者たちもそれを真剣に考えています。
そして、そこには私たちの日常とはまったく異なる「時間観」が広がっているのです。

ロヴェッリが語る「時間の終わり」と「始まり」

日本でも発売されたカルロ・ロヴェッリ著『時間は存在しない』の最終章（第13章）では、「時の起源」という、壮大かつ根源的なテーマが扱われています。

そこではこう語られています。

「世界の基本原理には空間も時間もなく、ある物理量から他の物理量へ変わっていく過程があるだけだ」私たちは時間が流れているように感じるけれど、それはエントロピー（乱雑さ）の増大によって、過去と未来が区別されるからに過ぎないのだ、と。

 つまり、時間は宇宙の本質ではなく、私たちの視点から見た「結果」にすぎないと言うのです。確かにこの考え方は説得力があると感じます。

プランク時間という“時間の壁”

物理学では「プランク時間」という考え方があります。これは、時間における「最小単位」とも言える値です。プランク時間は約 5.39 × 10⁻⁴⁴ 秒です。これは、現在の物理学で考えられる時間と空間の最小単位とされています。この時間よりも短い時間や、この時間で進む距離よりも短い距離は、現在の物理学では意味を持たないと考えられています。

「人類は“時のない領域”に触れられるか？」

ロヴェッリの本を読んで浮かんできたのは、こんな問いでした。

「もし時間が離散的で、最小単位以下のスケールで“変化”を引き起こせたら、人類はビッグバンのような“新しい時空”を人工的に起こせるのだろうか？

もしビッグバンの最初の瞬間を問うとすれば、私たちは「時間がまだ始まっていない」場所に入り込むことになると思うのです。

荒唐無稽に聞こえるかもしれませんが、現代物理の中には「真空の相転移」や「宇宙泡」のような仮説もあります。もしもプランク時間以下の領域に干渉できれば、私たちは「時間の始まりそのもの」に手を触れられるのかもしれません。

真空の相転移とは、宇宙の初期のような高いエネルギー状態の真空が、より低いエネルギー状態の真空へと変化する現象を指します。この変化は、宇宙の膨張や素粒子の質量の獲得など、宇宙の進化に大きな影響を与えたと考えられています。宇宙論では、真空の相転移が宇宙のインフレーション（急激な膨張）を引き起こしたと考えられているのです。

宇宙の泡構造は、インフレーション理論やマルチバース理論とも関連があります。インフレーション理論では、宇宙は指数関数的に膨張し、その過程で無数の「泡」が形成される可能性があります。これらの「泡」は、それぞれ異なる物理法則を持つ可能性があり、私たちの宇宙もその一つに過ぎないという考え方です。

時間がまだ始まっていない所からこの宇宙が始まったとすれば、そこでは物理学の法則が成り立たず、時間も存在しないと考えることができます。つまり、宇宙が始まる前はプランク時間より短い時間のスキマと同じ状態であり、そこから新しい宇宙を始められるのではないでしょうか？

おわりに

「時の起源」とは、単に宇宙の話ではありません。 

 ロヴェッリの言うように、世界には変化しかないのだとすれば、変化をどう見るかが私たちの時間そのものなのかも知れないと思います。それは、私たちが「今」をどう感じ、どう生きるかという問いにつながっています。

時間が「生まれる」ものだとすれば、私たちが感じるこの瞬間も、選択によって意味を持つのではないでしょうか。

参考リンク

プランク定数とキログラムの関係

真空の相転移で宇宙は始まった

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