タイタンの妖女の楽しみ方2

こんにちは。ブロガーNです。
気持ちがモヤモヤした時、短時間で気分を変えたいと思いませんか?
そんな時にこのブログを読めば、宇宙のイメージと知らなかった知識が気分転換のきっかけになります。

今回は、カート・ヴォネガット・ジュニアの「タイタンの妖女」から、量子もつれの話です。

小説に登場するロボットは、故郷の小マゼラン星雲から宇宙船を修理するための部品が届くのを、20万年もの間待っていました。小マゼラン星雲の宇宙人はすでに滅びていましたが、かつて宇宙人が作ったロボットたちが活動を続けていました。

小マゼラン銀河の拡大画像。CTIO(セロトロロ インターアメリカン天文台)の4mブランコ望遠鏡による撮影 (画像提供:NOAO/AURA/NSF)

人類は小マゼラン星雲からの影響を受けて、最終的に宇宙船の部品を作り、主人公マラカイ・コンスタントの息子がそれをタイタンに届けます。小マゼラン星雲は、太陽系から20万光年も離れていますので、普通に光で通信しても地球まで片道20万年かかります。これほど離れた場所にいる人類に影響を与える方法があるでしょうか。

これには「量子もつれ」理論を使えば、もしかすると可能かもしれないと感じます。

量子もつれとは、2つ以上の量子間に生じる結びつきで、離れていても互いに影響を及ぼし合える状態を指す量子力学の現象です。量子もつれの状態では、片方の粒子の状態が変化すると、もう片方の粒子の状態も瞬時に変化します。どんなに離れた場所にあっても、一方を測定することでもう一方の状態が確定するのです。

2022年のノーベル物理学賞は、量子もつれの研究に携わったアラン・アスペ教授、ジョン・クラウザー博士、アントン・ツァイリンガー教授の3人に贈られました。

量子間の同期の速度は光の速度を超えるという、まるで空間など存在していないかのような振る舞いです。この小説が出版された1959年には、すでにこの考えが知られていましたので、カートはもしかして量子もつれを意識していたかも知れません。小説では、宇宙からの不思議な力はUWTB(the Universal Will To Become)と呼ばれていて「たくさんの宇宙を無から創り上げたもの」と紹介されています。この力が量子もつれとは明記されていませんが、実際に量子もつれは宇宙の成り立ちにも関連していると考えられています。

量子もつれのイメージ

量子もつれが重力や時空の基礎を形成する可能性についての議論は、量子重力理論や現代物理学における最前線の研究テーマの一つになっています。量子とは、粒子と波の性質をあわせ持った、とても小さな物質のことです。 原子や、原子を形作っているさらに小さな電子・中性子・陽子も量子です。
量子もつれが存在すると、それがワームホールのように時空の幾何学構造を生成している可能性があるのではとの仮説があります。そして、時空は「場」や「粒子」の集合ではなく、量子もつれによって「織り上げられた」構造である可能性があると考えられています。

今後、量子もつれを介して時空や重力現象がどのように構築されるのかが解明されれば、量子重力理論の構築やブラックホールの情報問題の解決に寄与する可能性があります。その結果、宇宙の成り立ちの解明にもつながると考えられています。この研究はまだ初期段階にありますが、物理学の基礎的な理解を変える可能性を秘めた非常に興味深い分野なのです。

おわりに

量子もつれによって宇宙の成り立ちを解明できる可能性が出てきましたが、実際にはまだ量子もつれが何故起きるのかについての理論は確立していません。一方で、量子暗号や量子コンピュータなど、量子力学を応用した新しい技術が次々に実用化されています。

量子暗号は、光子に暗号化や解読に使う「鍵」の情報をのせて送る方式であり、情報漏洩を完全に防げる技術です。光子は誰かが不正に読み取ろうとすると状態が変化し、この兆候を検知することによって漏洩の危険性を無くすことができます。

量子コンピュータは、量子ビットと呼ばれる量子力学の法則を利用した新しい計算単位を用います。量子ビットは「0」か「1」が確定していない状態(重ね合わせ)のまま計算を進めることができます。量子ビットをn個集積させると最大2のn乗通りの数字を一度に扱うことができるので、従来のコンピュータよりも桁違いの処理能力を発揮することができます。

参考リンク

世界は局所的かつ実在的ではない

新方式の量子コンピュータを実現

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