銀河帝国の興亡の楽しみ方1

こんにちはブロガーNです。
SF小説を読んでみたいけど、なかなかきっかけがつかめないと感じている人は多いと思います。

そこで、このブログでは宇宙に関わるSFを中心に、読む前に知っておくと楽しさが倍増する知識を紹介します。できるだけネタバレしないように書いていますので、お楽しみください。

今回は、アシモフの名作「銀河帝国の興亡」から、スペースジャンプの話です。

地球から見える天の川銀河

夜の空は宇宙です。
そして天の川は地球から見える銀河系の中心部だとご存知の方も多いと思います。
都会で暮らしていると、なかなか天の川を見るチャンスはありませんよね。でも登山やキャンプに出かけて夜の空を見上げると、そこに銀河系の中心部を見ることができます。
では、銀河系の中心部とは地球からどれくらい遠いところでしょうか。

620057main_milkyway_full NASA/Adler/U. Chicago/Wesleyan/JPL-Caltech

この図は、銀河系を上から見た時の姿をイメージしています。(NASA提供)
銀河系の半径は約5万光年、地球は銀河系の中心部から大体2万8千光年で、上図のSunの位置です。中心からはかなり離れていますが、銀河系の端という訳ではありません。

このようにとてつもなく大きい銀河系ですが、私たちは夜の空を見上げるだけで、それを肉眼で見ることができるのです。見えるけど、そこまで行くには光速で移動しても2万8千年もかかる距離です。人類が初めて日本列島にたどり着いたのが約3万年前なので、私たちが見ている天の川は、その頃の銀河系中心部の光なのです。

さて、銀河帝国の興亡1の最初に登場するガアル・ドーニックは、ブルードリフト(銀河の北方象限に位置する渦巻きの腕の末端、これは恐らく上図のScutum-Centaurus-Armと書かれている腕の一番左端あたりと想像できます)の恒星をめぐる惑星シンナックスから、銀河系の中心部に近い惑星「トランター」への旅行で初めて「ハイパースペース・ジャンプ」を経験します。この距離は恐らく3万光年はありそうですが、ジャンプを2時間おきに数回繰り返して到着しています。実はこのシーンで、ジャンプがどんなものか期待していたガアルは、何も感じないであっという間に終わり失望してしまいます。

このようなスペースジャンプはスタートレックやスター・ウォーズにも登場しますが、この未来のテクノロジーは大きな宇宙を舞台にしたSFをうまく盛り上げてくれます。こんなに離れていても未知の星々や異なる文明を訪れると言うストーリーが成立するのは、ハイパースペース・ジャンプのおかげですね。

同じように、銀河系全体を帝国が支配するために必要な技術として、光速を超える通信テクノロジーがあります。それは銀河帝国の興亡では「ウルトラ・ウェイブ中継機」として登場します。

銀河帝国の崩壊後、最短期間で文明を復活させるためにファウンデーションが作られます。その市長であるサルバー・ハーディンが巨大巡航戦艦と通信する場面では、敵がファウンデーションを攻撃する直前に、ウルトラ・ウェイブ中継機を通じた指令によって数光年先の敵戦艦を無力化してしまうのです。

では、数光年先とは現実にはどれくらいの距離でしょうか。
太陽以外で地球に一番近い恒星「ケンタウルス座」のアルファ星は4.3光年離れた位置にあります。光の速度は1秒間に約30万km、1光年は9兆4600億kmなので、ケンタウルスアルファまでは、実に40兆6780億kmとなります。隣の太陽まででさえこの距離です!

ケンタウルス座の2つの1等星。左がα星。(Wikipedia)

この距離を隔ててリアルタイムで通信するには、スマホのような電波(電磁波)を使う通信手段では使い物になりません。目に見える光(可視光)も電磁波の一種ですが、電波も光もその波長や振動数が異なるだけで伝搬速度 ( = 波長 × 振動数)は光速に等しいことがわかっています。つまり現在の技術では、送信した情報はようやく数年後に相手に届くのです。

光速を超える通信も、現在の科学の壁を乗り越えた未来のテクノロジーの一つであり、これによってSF独特の面白さが生まれます。このようなテクノロジーの出現によって、人類の遠い未来に、銀河系全体を巻き込む物語が待っているかもしれないと想像させてくれるのがSFの魅力の一つですね。

さあ、貴方も銀河帝国の興亡を読んで、夜の空に天の川を見た時に、宇宙の広大さや人類の未来を感じてみてはいかがでしょうか?

おわりに

銀河帝国の興亡3部作が完成した1953年には、まだ地球の軌道上には人工衛星はひとつもありませんでした。その当時は、もちろん現在のように火星の地表のパノラマ画像を見たり、ハッブルが撮影した遠い銀河系の画像を見る事はSFの世界の話だった思います。

今回紹介した、ハイパースペースジャンプやウルトラ・ウェイブ中継機も、今はSFの世界のテクノロジーですが、もしかして100年後には現実になっているかもしれません。

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