順列都市 – 波動関数

こんばんは。ブロガーNです。

みなさんは、「宇宙にあるすべての物質は、本当は“確率”で存在している」と聞いたら驚きませんか?

地球も空気も自分の体も、実はある確率でたまたま現在の形になっている・・そんな不思議な世界を描いたSFが、グレッグ・イーガンの名作『順列都市』です。 

この小説では、人間の意識をコンピュータの中にコピーできる未来が描かれています。

主人公たちは、自分の脳や記憶をデジタル化し、仮想世界の中で生きています。つまり、肉体がなくても「自分」として存在できるのです。

さらに物語の中では、とても衝撃的な考え方が登場します。
それが「塵(ちり)理論」です。

これは「宇宙にバラバラに散らばった情報の中に、“人間の意識”と同じパターンが存在する」という考え方です。

主人公のダラムは、この「塵理論」を使って、物理的なハードウェアが破壊されても、人の意識の「コピー」を存続させられると主張します。

たとえば、巨大なジグソーパズルを想像してください。
普通なら、パズルがバラバラになれば絵は消えてしまいます。
でも『順列都市』では、宇宙全体に散らばった無数のピースの中に、完成したジグソーパズルの絵と同じ並び方が存在している、と考えるのです。

つまり、体やコンピュータが壊れても、「意識のパターン」さえ宇宙のどこかに再現されれば、自分は存在し続けられるかもしれない・・

かなりSFらしい発想ですが、実はこの考え方の背景には、現代物理学の「量子力学」があります。
量子力学では、電子や原子のようなとても小さな粒子は、私たちが普段見る世界とはまったく違う動きをします。

電子は「ここにある」とはっきり決まっているわけではなく、「ここにいるかもしれない」という確率の波として存在しているのです。その状態を表すのが「波動関数」と呼ばれるものです。

この式は、「粒子がその場所に存在する確率」を意味しています。
量子の世界では、粒子は観測されるまでは複数の可能性を同時に持っています。

しかし、人間が測定した瞬間、その可能性の中から1つだけが選ばれます。
これを「波動関数の収縮」と呼びます。

では、なぜ観測すると状態が決まるのでしょうか?
実は、これは現在でも完全には解明されていません。

物理学者たちは、いくつかの考え方でこの謎を説明しようとしています。
もっとも有名なのが「コペンハーゲン解釈」です。

これは、「粒子は観測されるまで本当に状態が決まっていない」という考え方です。
アインシュタインはこの考えに反対し、「神はサイコロを振らない」という有名な言葉を残しました。 

一方で、「多世界解釈」という考え方もあります。
こちらは、「観測のたびに宇宙が分岐している」という驚きの理論です。
たとえば、電子が右に行く宇宙と左に行く宇宙、その両方が実際に存在していて、私たちはそのうちの1つを見ているだけだ、という考え方です。

まるでSFのパラレルワールドですよね。

さらに「本当は決定的な法則が隠れているだけでは?」という「隠れた変数理論」もあります。
ただし、現在の実験では、宇宙が本当に量子的なランダム性を持っていることを支持する結果が多く得られています。

つまり現代物理学では、「宇宙は根本的にはランダムかもしれない」という考え方がかなり有力なのです。そして『順列都市』は、この量子的なランダム性を極限まで広げて考えました。

もし人間の意識が「情報のパターン」にすぎないなら・・
もし宇宙のどこかで、そのパターンが再現されるなら・・

つまり、「デジタル化された人の意識」が、宇宙の素粒子のパターンを認識した時に「状態が確定」して、その人の意識のパターンは継続できる。そして、宇宙に素粒子が存在している限り、永遠の意識を実現できると考えたのです。

人の意識は、宇宙が存在する限り、永遠に続く可能性があるのではないか?
そんな壮大なアイデアが、この作品には詰まっています。

もちろん、現実にはまだ人間の意識を完全にデジタル化する技術は存在しません。
そもそも、「意識とは何か」さえ完全にはわかっていないのです。
ですが、AIや脳科学、量子力学は今も進歩し続けています。

未来には、「人の記憶を保存する技術」や、「デジタル空間の中で生きる存在」が本当に登場するかもしれません。そう考えると、『順列都市』の世界は、ただの空想ではなく、「未来の可能性」の1つに思えてきませんか?

SFは、ときどき現在の科学よりも先に、未来の問いを私たちに見せてくれるのです。

参考リンク

ついに解けた!量子力学100年のミステリー

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