果しなき流れの果に – テレパシー

こんばんは。ブロガーNです。

もし、言葉を口に出さなくても、考えただけで相手と会話できるとしたらどうでしょう?

スマートフォンもメールも必要ありません。頭に思い浮かべただけで、遠く離れた相手へ気持ちや言葉が伝わる・・そんな能力を、SFでは「テレパシー」と呼びます。

今回は、小松左京の名作『果しなき流れの果に』から、テレパシーと最先端の脳科学について見ていきましょう。

火星から突然聞こえてきた友人の声

物語の舞台は、人類が滅亡の危機に直面した未来です。太陽の異常活動によって地球は壊滅寸前となり、26歳の青年ハンスは地球に取り残されます。

そのとき突然、約8000万km離れた火星にいる友人の声が頭の中へ響いてきます。
さらに現れた謎の宇宙船の乗員は、口を動かすことなくハンスの脳へ直接話しかけてきます。

まるで頭の中にもう一人の人が入り込み、会話を始めたような不思議な体験です。
SFではおなじみのテレパシーですが、本当に実現できるのでしょうか。

現実には「光の速さ」という壁がある

実は、現在の科学の分野では大きな壁があります。

それは光の速さです。

宇宙では、電波も光も同じ速さでしか進めません。
例えば地球と火星は、近いときでも約5500万km、遠いときには約4億kmも離れます。

この距離では、電波は片道だけでも数分から20分以上かかります。
つまり、地球から火星へ「もしもし」と送っても、すぐには返事が返ってきません。
往復では最大約40分近く待つことになります。

SFのように「話した瞬間に返事が返ってくる」という通信は、現在の物理学では実現できないのです。

テレパシーに近づく「ブレインテック」

しかし、「考えただけで会話する」という部分だけなら、少しずつ現実になり始めています。

そこで注目されているのがブレインテック(BrainTech)です。

ブレインテックとは、人間の脳の働きを計測し、コンピューターとつなぐ技術の総称です。
その中心となる技術がBMI(Brain Machine Interface:ブレイン・マシン・インターフェース)です。

BMIでは、脳が発する電気信号を読み取り、
「腕を動かしたい」
「文字を入力したい」
「言葉を話したい」
という脳の活動をコンピューターが解析します。

実際に、体を動かせない人が脳だけでカーソルを動かしたり、文章を入力したりする研究が進んでいます。さらにAIの進歩によって、脳の信号から「どんな言葉を考えているか」を推測する精度も少しずつ高くなっています。

将来は、スマートフォンを操作する代わりに「送信したい」と考えるだけでメッセージが送れる時代が来るかもしれません。

読まれたくない考えは守れるのか?

便利な技術には、新しい課題も生まれます。
もし脳の情報を読み取れるようになれば、自分だけの秘密まで知られてしまうかもしれません。

『果しなき流れの果に』では、この問題も描かれています。

人工衛星事故を調査する保険会社のメンバーは、重要な秘密を守るため、
脳の中に「立ち入り禁止領域」を作っています。そこだけは外部から調べても何も分からないようになっているのです。

もちろん、これは現在の科学では実現していません。
しかし近年では「脳の情報も個人情報として守るべきだ」という考え方が世界中で議論され始めています。

将来、脳とコンピューターが直接つながる時代になれば「脳のプライバシー」を守る技術も同じくらい重要になるでしょう。

SFは未来の研究テーマを教えてくれる

最近では、AIを使って脳の働きを詳しく解析し、その成果をAIの開発へ生かす研究も進んでいます。

つまり、

脳を研究してAIが進化し、そのAIがさらに脳の研究を進める。

そんな面白い循環が始まっているのです。

もちろん、SFのように光より速く情報を送り、何億kmも離れた相手とリアルタイムでテレパシーを行う技術は、現在の物理学では極めて難しいと考えられています。

それでも「考えるだけで会話する」という未来は、少しずつ現実へ近づいています。
小松左京が描いたテレパシーは、単なる空想ではありません。

脳科学、AI、情報通信技術が進歩する今だからこそ、SFの世界は少しずつ私たちの日常へ近づいているのです。未来のある日、スマートフォンの代わりに「考えるだけ」で会話する世界が訪れるかもしれません。

そんな未来を想像しながらSFを読むと、物語がもっと面白く見えてくるはずです。

参考リンク

「テレパシー」を科学的に実現することに成功

脳から情報を取り出して活用するBMI

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